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Artist

WILFRIDO VARGAS

Title

MAS QUE UN LOCO


mas que un loco
Japanese Title エル・クク
Date 1988
Label SONOTONE SO-1423(US)/
ボンバ BOM105(JP)
CD Release 1988/1990
Rating ★★★★★
Availability ◆◆◆◆


Review

 ワールド・ミュージック全盛期に、ボンバを通じて、はじめて国内配給されたアルバム(ただし直輸入盤にオビと解説をつけただけであるが)。完成度では"EL FUNCIONARIO"と並んでウィルフリードの最高傑作の部類にはいる。

 ハイチのD.P.エクスプレス、タブー・コンボ、小アンティル諸島のカッサブ、コロンビアのカリスト・オチョーア、ソウルのクラレンス・カーターの作品など、旬の素材にいち早く目を付ける嗅覚にかけては定評のあるウィルフリードだが、ここでも米国南部ルイジアナ州の黒人音楽ザディコのミュージシャン、ロッキン・シドニーが85年に放ったヒット曲'MY TOOT TOOT'をメレンゲにくるんで'EL CUCU'として調理。メレンゲを基点として、米国南部の音楽も含めた壮大なパン・カリビアン・ミュージックを構想するウィルフリードの面目躍如というところ。

 クンビアにはじまりサルサに変わっていく'BOTA LA BATA'では、表面上メレンゲは影を潜めているものの、辛いサルサ・ソースを使う代わりに、ソフトな口当たりを与える隠し味に用いられているあたりはさすが。ロス・ベドゥイーノス時代から盟友ソニー・オバージェのアレンジに加えて、サルサのアレンジにプエルト・リコのグンダ・メルセーを起用した効果がこのあたりにあらわれているのかもしれない。

 'SAMBUNDANGO TELENO'は、メキシコのロス・ガトス・バラボスの曲。メキシコ的な祝祭気分のなかにも、ズーク(小アンティル諸島)やソカ(トリニダード)のフレイヴァーが認められる。ホーン・セクションのドライブ感がすばらしい。
 レゲエ・センスな'LA CHICA DE LOS OJOS CAFE'にいたっては、スレンテン(ジャマイカ)をしてしまっている!でも、黒っぽさは皆無。そんなところがじつにメレンゲ。

 このようにサルサ、ズーク、ソカ、クンビアなどなど、メレンゲのワクに収まりきらない旺盛な(無節操ともいう)吸収力を発揮するいっぽうで、泣きのメロディがベタな歌謡メレンゲ〜歌謡サルサを入れるのを忘れていないところなんか、大衆芸能の王道をひた走るウィルフリードらしくていい。

 しかし、なんといってもハイライトは、コロンビアのバジェナートのふたり組、ビノミオ・デ・オロをゲストに迎えたラストの'LINDA MELODIA'だ。ビノミオのイスラエル・ロメーロの作なるこの曲で、ロメーロが奏でるすばらしいアコーディオンの音色が最新のテクノロジーと見事に融合して、極上のワールド・ミュージックを産み出している。ビノミオのラファエル・オロスコとウィルフリードとのヴォーカルの掛けあいも微笑ましい。ウィルフリードが手がけた数ある楽曲のなかでいちばんのお気に入りである。


(8.26.02)



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by Tatsushi Tsukahara